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鳥取大学医学部 生化学 (旧統合分子医化学)

ごあいさつ

 生化学・教授 松浦 達也

 

 ご挨拶に当たり、当教室の歴史を簡単に振り返りたいと思います。

 1945(昭和20)年の米子医学専門学校の開講当初より生化学の講義を岩倉源駒初代教授、鳥飼 明第2代教授が担当されました。1948(昭和23)年に米子医科大学が開校し、山崎三省第3代教授(1951年から鳥取大学教授)が生化学講座を主宰されました。1971(昭和46)年からは小倉道雄第4代教授が講座を担当され、山崎、小倉両教授時代は胆汁酸研究で素晴らしい業績を残されました。1995(平成7)年に第5代教授として広島大学から山田一夫先生が赴任されました。この頃より、生化学講座(2002年より病態解析医学講座統合分子医化学分野、2020年より現生化学分野)の研究テーマは酸化ストレスを中心にしたものとなりました。私は、山田教授のもとで助教、講師、准教授として勤めさせてもらい、山田先生の後を受けて2009(平成21)年41日に、第6代教授に就任致しました。

 現在、当教室では「酸化ストレスと病態」というテーマを研究の大きな柱としていますが、酸化ストレス以外にも研究の幅を広げています。酸化ストレス関連では「アポトーシスにおける酸化ストレスシグナル」、「酸化ストレスと脳神経疾患」、「酸化ストレスと細胞極性」に関する研究を行っています。また、最近ではビタミンEなどの抗酸化ビタミン類の非抗酸化作用による新規生理活性の探索も行っています。これらの研究には臨床教室からの大学院生、生命科学科の学生さんが携わってくれています。また、研究室配属の後も教室に出入りして研究を手伝ってくれた医学科の学生さんもいます。ヒトゲノムの塩基配列決定などの成果により生命の基本的構造に対する多くの情報が集積され、また遺伝子やタンパク質を可視化する技術と相まって生命科学研究は飛躍的に進歩しています。生体内高分子物質に加えて、私たちの取り扱う活性酸素のような低分子のガス分子も各種疾患や、動脈硬化、老化の原因に関与していることが知られていますが、最近では生物がこの活性酸素をシグナル伝達の手段として生体内で利用している可能性が示唆されています。私たちも上述しました研究により活性酸素による酸化ストレスが生命現象にどのような役割を果たしているかを明らかにして行きたいと思っています。

 次に教育に関しまして、当教室は細胞生化学をはじめとした講義・実習を担当しています。肥満が“現代の疫病”と言われるように、飽食の時代にあって、メタボリックシンドロームや2型糖尿病をはじめとする疾患が、癌、新興感染症とともに今後医学的に最も重要な課題となると考えられます。また、高齢者においては、要介護の主要な原因であるサルコペニア・フレイルに低栄養が関与していることが明らかになっています。この意味からも生命活動における代謝を理解することは今後益々重要になってくるものと思われます。各代謝(糖質、脂質、アミノ酸、核酸など)の相互関係、臨床との関連性を意識し、モデル・コア・カリキュラムに準拠した講義を行っています。基礎医学実習や研究室配属のデータ発表会・抄読会では、今まで学習した基礎医学の知識をフルに活用してプレゼン、討論する姿勢(論理的かつ科学的思考力や批判的判断力)を教えています。先端的な研究の知見も紹介し、将来医師としての新しい知識習得の基盤となる生化学教育を行うことを目指しています。

 当教室が中心となって他教室との連携の一環として2013(平成25)年YOC (Yonago Oxygen Club)というJournal Clubを立ち上げました。既に200回以上開催されています。当初はタイトル通り酸素やミトコンドリアに関連するトップジャーナル(Nature, Science, Cellおよび姉妹誌)の最先端の論文を紹介することが目的でしたが、最近は酸素関連以外のテーマでもトップジャーナルの論文を紹介して討論するというスタイルに変わってきています。現在は基礎医学3教室の有志が参加して行われていますが、興味のある方は是非参加してください。

 学部学生さんへのお願いです。私たちが学生の頃には、基礎医学教室に出入りして研究の手伝いをしている学生もいましたが、最近はほとんどいなくなりました。教室にやってくるのも再試験の切羽詰まった時のみの状態です。私たちは常に「来るものは拒まず去る者は追わず」という精神でいます。たとえ研究に興味が無くても構いません。雑談をしに気軽に教室を訪れてください。飲み会も開いていますので、飲みに来るだけでも構いません。私の他に准教授の中曽先生も臨床医になってから基礎研究に転向していますので、将来のことについていろいろとアドバイスできると思います。

 私たちは教育・研究を通じて鳥取大学の発展のために尽力したいと思っております。